南区の笠寺公園には、見晴台考古資料館と住居跡観察舎があります。このうち住居跡観察舎は、昭和61年の発掘調査で発見した住居跡を、常に見学・学習できるようにと設置されました。その中には弥生時代のものとされる竪穴式住居が推定復元され、多くの公園訪問者の方に親しまれておりました。下の写真は在りし日の様子です。

しかし、平成25年夏に下の写真のように、南東方向に傾きが始まり倒壊の危険性が発覚したため、取り壊しが行われました。

そのため、現在は住居跡観察舎内での竪穴式住居を見学することができない状態です。これを何とかしようと、見晴台考古資料館と南区役所と協力して、竪穴式住居を地域の皆さんとともにつくろうというプロジェクトを開始しました。プロジェクト開始にあたっては主に春日野学区・桜学区をはじめとした地域の皆様、約20名の方にボランティアとして参加をいただいておりますのでこの場を借りてお礼申し上げます。
このプロジェクトは現在までに二回開催されました。
第一回目は12月6日(土)に開催されました。この日は、参加者の顔合わせとどのような方法で竪穴式住居を作っていくのかということを見晴台考古資料館の学芸員から説明いただきました。
以前の竪穴式住居は建築のプロが設計し組み立てを行っておりましたが、今回はそのような状況ではなく、素人集団によって組み立てていくことになります。そのため、以前の竪穴式住居を元の形そのままに復元することは不可能であるため、材木を流用しながら、新しい竪穴式住居をつくっていくという方針を説明しました。また見えない部分においての補強には現代の技術も使っていく予定です。この日は、観察舎の中の確認を行って終了しました。
第二回目は2月28日(土)に開催されました。この日に行ったのは、保存部材の確認と今後の作業方針の検討です。
この日の内容を大まかにお伝えすると、解体した材木が観察舎内にバラバラに置かれており、何をどのように使用したらいいかが分からないため、この材木を外に運び出し整理するというものです。また、外に整理されて置かれた材木をもとに学芸員さんが説明を行い、今後の方針について確認を行いました。
観察舎に移動して、作業が開始されると参加者で協力し合いながら材木を取り出し、外に運び出しを行いました。ちなみに写真の奥のほうでビニールシートにくるまれているのは、屋根に使う萱(かや)と呼ばれるものです。このビニールシートがあるあたりに竪穴式住居をつくることになります。
観察舎の外にはこのようにどんどん材木が積み上げられてきました。
中には重たい材木もありましたが、観察舎内のすべての材木を外に運び出しました。この後、学芸員さんから、それぞれの材木の役割についての解説が行われ、今後柱として使うものなどの整理を行いました。下の写真の手前側が屋根などに使う小さい材木であり、一番奥に見えるものが柱になる太い材木となります。
上の写真の一番奥の材木をアップにするとこんな感じです。
その後、先ほど説明したように組み立てる場所には多くの萱が置いてありましたので、萱を全員で運び観察舎の入り口付近に移動させました。
このときは萱からとても多くの埃が舞う状況で、大変作業環境が悪い状況でしたので、参加者の皆さんはとても大変だったと思います。このようにすべての萱の移動が終わりました。

最後に外に置いた材木を観察舎内に戻し、部品ごとに整理して保管を行いました。また、次回に向けて、組み立てる場所に柱となる材木を並べました。これでこの日の作業は完了です。
写真で見ると小さく見えますが、実際は長さ2mほどある太くて大きい柱になります。この材木をそのまま使用したいところですが、かなり傷んでいることも分かったため、実際に使用するかは今後検討をしていきます。
参加者の皆様には積極的に作業に協力していただき本当にありがとうございました。この日は力仕事が多かったため、かなり疲れたと思います。本当にお疲れ様でした。最後に参加者で集合して記念写真です。
今年度の作業はここまでとなります。来年度に本格的に組立作業を行い完成を目指します。次回の開催は、5月30日(土)で骨組みを作り主柱を立てる作業を行う予定です。
現在も観察舎に入ることは可能です。今までの作業の状態を確認することができますので、笠寺公園にお越しの際はぜひお立ち寄りください。また、内容について興味がある方は南土木事務所までお問い合わせください。
担当:南土木事務所