愛する妻のため、絶対不可能と言われた無農薬リンゴ栽培に取り組んだリンンゴ農家のお話は、本や映画で、ご存じの方も多いと思いますが、実は、名古屋市の街路樹も農薬に頼ることなく病害虫を駆除しています。
そこで、今回は「奇跡のリンゴ」ならぬ「奇跡の街路樹」というお話。こちらも感動の実話になっています。
◆「どりょくん日記」も、映画「奇跡のリンゴ」のヒットに
あやかろうと、ポスターを作ってみました。
鮮やかな新緑と日差しのまぶしい季節となりました。まぶしすぎるという声もありますが、日差しが強まるにつれ、増えてくるのが、毛虫などの害虫の発生です。
◆毛虫は、主に樹木の葉や草花を密かに食すため、庭木や公園の樹木や街路樹などの葉の裏側に生息します。写真のような爽やかな緑の中にも潜んでいます。
毛虫は、その姿から嫌う人が多いですが、問題なのは、見た目だけでなく、うっかり触ると、種類によっては、かゆみなどのトラブルを生じることがあるから困ります。
農薬で駆除するのが、手間も時間も、そしてお金もかからない手っ取り早い方法ですが、名古屋市では、農薬を使用しない駆除を行っています。
農薬は、「薬」であるので、害虫駆除のほかに、害虫忌避や発生抑制に効果がある一方で、植物の受粉をするミツバチなど、人間生活に利益を与える虫をも殺してしまったり、また人にも影響を与えたりするからです。
◆すべての毛虫に毒があるというわけではありません。中でもイラガ(写真右)は、刺されると電気が走ったような痛みが走ります。市内の街路樹ではよく発生する害虫なので、この姿を覚えておいて、触らないでくださいね。また死骸にも毒があるのでご注意を。
実は農薬に関しては、市民の方からご要望のメールをいただくことがあります。
ある送り主の方は、自宅の庭に農薬を撒いていたところ、体に不快な症状が現れるようになったそうです。
そこで、農薬の種類を雑草や生ゴミから作る自然農薬に変えたところ、体の不調が治まり、その自らの経験から、「街路樹に農薬を撒くのなら、自然農薬を使ってはどうか」という提案をされておられました。
◆7月から8月上旬にかけて見られるクチナシ
しかし、自然農薬も農薬の一種であることに変わりありません。そこで本市ではさらに進んで次のような方法を行っています。
「名古屋市における農薬・殺虫剤等薬剤の適正使用にかかわる基本指針」を制定し、「一律に薬剤を使用することは原則として行わない」と定め、できるだけ、農薬を使わない方法で害虫駆除を行っています。
◆7月から9月にかけて見られるアベリア
具体的には、「剪定防除」と言っていますが、まだ毛虫の小さいうちは、葉の裏側などに固まっていることが多いので、枝葉ごとに切り取って駆除する、とても手間と時間がかかる方法を行っています。
また病害虫が発生しない樹木であれば、防除の必要もなく、農薬を使用する必要がないので、日頃から街路樹の健全な生育を心がけ、病害虫が発生しない環境づくりを実践しています。
例えば、風通しや日当たりをよくするため、過密な植栽は避け、枝を間引く剪定をしたりするのも、その一つです。
◆7月から9月にかけて見られるサルスベリ
「奇跡のリンゴ」は、年に数十回もリンゴに農薬を撒いていた妻が、体調の異変を生じたことがきっかけで、無農薬栽培に踏み切った実話がモトになっています。
つまり、妻への愛が、「奇跡のリンゴ」を生んだ、というわけなのですが、次の世代に安心安全な環境をつなげたい、と、農薬に頼らない防除をする名古屋市は、街への愛、と言いかえられるかもしれませんね。
さて最後に、農薬を使用しない病害虫防除の要は、「早期発見」です。そのためには、市民の皆様の通報も有力な情報源となります。
ぜひ毛虫などの害虫を見かけた際は、お近くの土木事務所にご連絡ください。
皆さまの愛もお待ちしています。
【お知らせ】 緑政土木局緑地維持課では、「街路樹にまつわる情報」を毎日ツイッターにて発信しています。こちらものぞいてくださいね。
https://twitter.com/nagoya_ryokuiji
担当 : 緑地維持課 緑化係
テーマ : 生活・暮らしに役立つ情報
ジャンル : ライフ