5月の時候のあいさつのひとつに、「葉桜の頃」があります。暖冬だったせいか、今年のサクラは、あっという間に葉桜になってしまいましたが、この春、散ってゆくサクラを見上げて、こうつぶやくお年寄りに出会いました。
「あれだけ多くの人を楽しませたのだ。これは散り始めではなく、十二分咲きだ」と。
みなさんは、この春、サクラを十二分に楽しみましたか?
実は名古屋には、約8000本のサクラが街路樹として植えられています。名古屋を代表するサクラ並木をここに選んでみました。
もう一度一緒に、花見をしてみませんか?

名古屋でいち早く咲くサクラは、鮮やかな花の色が特徴の
カンヒザクラです。漢字では、寒緋桜と書くように、まだ寒い時期の2月下旬から3月にかけて、緋色(黄色がかった紅色)の花を咲かせます。
東区のオアシス21の北側の東西線に、カンヒザクラの並木が続いていますが、その時期、この周辺に行くと、離れたところからでも、通りが赤く染まっているのがわかります。


◆紅色の花が特徴カンヒザクラ。東区オアシス21の北側の東西線の並木が、例年いち早く春を告げる。
徳川園から名古屋城にかけて、「文化のみち」と呼ばれる歴史建築物が立ち並ぶエリアがあります。江戸時代から明治、大正へと続く、名古屋の近代化への歩みを伝える貴重な建物が残されているのですが、この名古屋のシンボル的な街並みの中にも、見ごたえのあるサクラ並木があります。それが出来町通の白壁交差点から桜通の桜通泉二丁目交差点にかけて植えられた
オオカンザクラです。
このオオカンザクラが並ぶ通りは、文化のみちの中でも、歴史的遺産が多く立ち並ぶ通りで、花が咲く時期は、まさに趣ある建物に花を添えています。


◆「花が大輪で下を向いて咲くのが特徴のオオカンザクラ。日本初の女優と謳われた川上貞奴と、電力王と称された福沢桃助が暮らした屋敷(現・二葉館)前にも並木がある」。
(写真提供:東土木事務所)
「寒さ暑さも彼岸まで」、と言われますが、続いて紹介するのは、春の彼岸の頃に咲く、その名も
ヒガンザクラです。
緑区の滝ノ水川にかかる滝ノ水川橋第1号橋から、滝ノ水川に沿って、神沢三丁目交差点まで続くヒガンザクラの並木は、春の訪れの象徴として、マスコミが取り上げるほどの人気スポットです。


◆「淡紅色の花が特徴のヒガンザクラ。街路樹が作るピンクのトンネルは、知る人ぞ知る名所となっている」。(写真提供:緑土木事務所)
それでは、いまやサクラの代名詞となっている
ソメイヨシノの並木を紹介していきましょう。
◆「ソメイヨシノとユキヤナギの花が同時に楽しめるのも山崎川の魅力」。
(写真提供:瑞穂土木事務所)
瑞穂区の石川橋から、新端橋までの2.8キロメートル。と書けば、もうそこがどこかおわかりですよね。約600本のソメイヨシノが並ぶ山崎川は、
「さくらの名所100選」(財団法人日本さくらの会)に認定された日本を代表するサクラの名所です。
特に木造で風情のある鼎小橋の周辺には、美しい花を咲かせる老木が数多く残され、風情を感じる一方、同時期にユキヤナギも開花し、ピンクと白のコントラストを楽しませてくれるのも、山崎川ならではの魅力です。
花の時期は、夜間ライトアップも行われ、夜桜も楽しませてくれます。

◆「瀬戸線に沿って続くソメイヨシノ並木」。
(写真提供:東土木事務所)
通称「瀬戸線緑道」、東区の名鉄瀬戸線「清水」駅周辺から、瀬戸線に沿って東へ向かって続くメイヨシノの並木。並木に沿って、歩いていきたくなります。電車からの眺めも格別です。

◆千種区すいどうみち緑道のソメイヨシノ並木
千種区今池北から、東山の給水塔に向かって続く、すいどうみち緑道のソメイヨシノ並木も、名古屋を代表するサクラ並木のひとつです。最盛期には、花のトンネルができます。
冒頭の「十二分咲き」の話は、右の散り始めの写真を撮影している時に耳にしたものですが、それだけこのサクラ並木は、地元の人に愛されている証と感じました。

◆名東区 藤が丘駅周辺のソメイヨシノ並木(写真提供:名東土木事務所)
住宅地として開発が進む名東区の地下鉄「藤が丘駅」周辺の道路にもソメイヨシノが植えられています。駅周辺に並木があるため、周辺の人は、通勤通学時に花見ができ、つぼみから開花まで毎日変わる花の様子を楽しむことができます。まさにこちらも地元の人に愛されている並木です。
満開の花でできたピンクのトンネルは、春につながるトンネルのようにも見えます。
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思えば、日本人は、冬の頃からサクラを咲くのを待っているような気がします。それゆえ、ソメイヨシノが散ると、祭りの後にも似た寂しさがこみあげてくるのですが、ソメイヨシノが散った後、あでやかな花を咲かせるサクラがあります。関山(カンザン)などの品種で知られるサトザクラです。
ソメイヨシノが春の訪れを告げるサクラなら、サトザクラは、春の盛りを告げるサクラ、と表現したくなるほど、咲く姿がふくよか。
それもそのはず、ソメイヨシノの花弁が5枚であるのに対し、関山は20~50枚。いかにボリュームある花を咲かせるかおわかりいただけますよね。
サトザクラの並木で知られる通りは、桜山から新端橋にかけての環状線。4月の半ばを過ぎると、トラックが行きかう大動脈が一転鮮やかな通りに変わります。

◆「サトザクラを代表する関山の並木は、桜山から新端橋にかけて続く」。
(写真提供:瑞穂土木事務所)
さて、名古屋のサクラ並木を紹介してきましたが、もう一度お花見を楽しんでいただけたでしょうか? そして来年の花見の参考になりましたでしょうか?
最後に紹介するのは、昭和区滝川町東西線でみつけたソメイヨシノのつぼみです。次の春も、きっと見事な花を咲かせてくれることでしょう。
それではまた、サクラ並木でお会いしましょう。

◆ソメイヨシノのつぼみ(写真協力:昭和土木事務所)
【お知らせ】
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